研究概要 |
新鮮なシダ植物から得られるトリテルペノイドその他の化合物を指標として、次の様な植物群について分類学上大変有意義な結果を得た。 1.日本産16種のイノデPolystichum属植物のpolypodatetraeneその他のトリテルペノイドとphytolを検討し、イノデ他4種の南方系イノデ,ホソイノデ他4種の北方系イノデ,オオキヨスミシダ他2種,オリヅルシダ,ツルデンダ等の間で、成分的に区別できることが明らかになった。 2.ハコネシダAdiantum属植物では、オキナワクジャク新鮮葉の成分を検討し、新化合物17β-hydroxyhopane他12種のトリテルペノイドを同定した。昨年度得られた5種の同属植物、従来行った2種の植物の研究結果とあわせて、本属植物の成分的特徴について、一応の結論を得ることができた。 3.エビガラシダは、トリテルペノイド他のイソプレノイドが全く検出されない特殊なシダで、その成分として3種のフラボノール配糖体と新化合物2-methyl-6-prenyl-1,4-benzenediol-1-0-glucosideが得られた。この結果はジテルペノイドやセスターテルペノイドを著量に含むヒメウラジロ,ミヤマウラジロ等とは全く異っており、別属として取扱うのが妥当である。 4.オオエゾデンダ他2種の日本産Polypodium植物の成分研究が、ほゞ完了した。その結果成分的に7種の日本産Polypodiumを、Polypodium(オオエゾデンダ他2種),Polypodiodes(アオネカヅラ他2種)とミヨウギシダの3つのグループに分けるべきであるとの決論に達した。 5.マメヅタ属植物の成分研究を続行し、マメヅタのトリテルペノイドは14種の炭素骨骼をもつ31種の化合物を得たことになる。一方、リュウキュウマメヅタは、成分的にマメヅタと大きな差があり、独立種Lemmaphyllum Qutehuense(NAKAI)とするのが妥当である。
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