研究概要 |
東洋医学に使用される生薬の中で、半夏はその強い鎮吐作用を有する点で特徴づけられる。トノサマガエルによる鎮吐検定法を用い、その生理活性物質の本体を追求した。半夏を水で抽出し、透析、セファアクリルS-300ゲルクロマトグラフィー,高速液体クロマトグラフィー(カラム,TSK G-4000SW,移動相水)を使用し精製を試み、分子量80万の物質PT-F2-1を得た。本物質は、アポモルフィン,硫酸銅,さらには、中毒原因キノコの一種であるクサウラベニタケの毒成分、コリンおよびムスカリンに対しても、100μg/mlの濃度で、100%の鎮吐率を示した。PT-F2-1は、アラビノース50%,ガラクソロン酸16.5%,グルコース,フコースより構成され、さらにアセチル基2.3%,カルシウムイオン1.9%を含むペクチン様物質である。本多糖類について、【^(13)C】NMRによる解析,メチル化分析,酸部分加水分解により構造研究を行い、その化学構造を図のように推定した。又、市販されている半夏、西方半夏および切半夏半とん(修治した半夏)についても鎮吐率を検討したところ、その水エキスについて、本実験で得たものと同等の生理活性を示した。漢方医書においても、鎮吐作用を期待して使用されている場合も多く、又、上記の毒キノコの中毒症状を改善する作用が著明であることを考え合せ、本研究が、半夏の鎮吐作用について、1つの答を出したものと考える。
|