研究概要 |
シクロデキストリン(CD)はその内空孔に疎水性物質を包接しゲスト分子の安定化や溶解性の向上,吸収の増大などをもたらし、食品,医薬品工業で盛んに用いられている。そこで(1)CDの疎水性が単糖のもつ弱い疎水性にもとづくこと疎水性指標を計算することにより明らかにした。(2)溶血活性の最も強いO-dimethyl-B-CDの水溶液の熱力学量を測定し、この物質が他のメチル化されていないCDとは異なり疎水性の強い溶質であることを明らかにした。(3)レシチンのみからなるリポソームのCDによる膜破壊はα->β->γ-CDの順で、これはα-CDの内空孔がレシチンのアシル基の大きさに最もよく適合することが原因であり、メチレン鎖6コ当り1分子のα-CDが包接することが明らかになった。(4)イオン残基をもつアルキルアンモニウム塩のCD包接形成定数を導電率法で測定し、イオン残基は包接形成を阻害し、内空孔経に依存してα->β->γ-CDの順に包接形成能が大きい。(5)生体膜と関連してレシチンにコレステロールを加えた混合脂質を用いてリポソームを作り、CDの膜破壊作用を調べた。レシチンリポソームではO-dimethyl-β->α->β->Otimethyl-β>γ-CDの順であるがコレステロールを50モル%含むリポソームではO-Dimethyl?->β->α->【γ^-】>O-trimethyl-β CDの順で溶血の結果と一到した。CD水溶液上に展開したレシチンまたはコレステロール単分子の表面圧の変化から、レシチンに対してはα-CDが、コレステロールに対してはβ-CDが最も強く分子認識し、膜をこわすことがわかった。(6)経口投与したCD包接体の消化管中での運命に関連して胆汁酸塩との水中での相互作用を研究し、胆汁酸塩濃度の低いときはゲスト分子と胆汁酸塩が包接交換を行ない、cm?以上ではfreeになったゲスト分子が胆汁酸ミセルに可溶化分配されることがわかった。以上述べた結果はCD包接体の生体内投与に関して重要な基礎知見を与えたものと考えられる。
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