研究概要 |
近年、発癌遺伝子の研究が進展し、細胞の増殖制御機構に多くの関心が寄せられているが、その中心命題である哺乳類細胞のDNA複製や、その開始制御の分子機構については、ほとんど解析されていないのが現状である。そこで本研究では、哺乳類細胞のDNA複製機構及び、その開始制御機構を明らかにするために、DNA複製温度感受性変異株を用いて遺伝生化学的解析をするとともに、in vitroで複製の素過程を再構成し、分子レベルで解析することを試みた。 1.哺乳類細胞のDNA複製に必要な酵素・蛋白の精製 マウスFM3A細胞から、DNApolymeraseα-primase複合体,DNAtopoisomerase【I】,【II】,4種のDNA依存性ATPase,DNApolymeraseα活性促進因子等を精製した。 2.複製の素過程の解析 (【I】)二本鎖DNAがまきもどされて一本鎖になる過程:この過程に働く酵素として、二本鎖DNAを一本鎖にまきもどすDNAhelicase活性について検討したところ、精製した4種のDNA依存性ATPaseのうちATPaseBにhelicase活性があることが明らかになった。このhelicase活性の発現にはATPの水解が必要であり、helicase単独で約120baseの長さのDNAをまきもどすことが可能であった。(【II】)一本鎖DNA上でのOkazaki fragmentの合成:精製したDNApolymeraseα-primase複合体を解離・再構成することにより、RNAブライマーの形成機構及びRNAプライマーからDNAへの切り換えの機構を明らかにした。(【III】)一本鎖DNA上でのDNA合成:DNApolymeraseα活性促進因子の促進機構を解析し、その促進がプライマー末端からのDNA合成の開始頻度を上げることによることを明らかにした。
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