研究概要 |
脊髄前角に存在するTRH(thyrotropin releasing hormone)は近髄の縫線核から下行するセロトニン(5-HT)神経の終末内に5-HTと共存する。本研究においては、5,6-dihydroxytryptamine(5,6-DHT)処理での5-HT神経の破壊によって、TRHおよび5-HT受容体のsupersensitivityが生じるのか否かを、脊髄反射を指標として調べた。 C1レベルで脊髄ラットとした麻酔ラットの単シナプス反射(MSR)および多シナプス反射(PSR)を記録した。5,6-DHTは大槽内へ投与し、2週間後に実験に用いた。 腰髄レベルのTRH含量は、5,6-DHT処理により著明に減少したが、MSRおよびPSRに対するTRHの増強効果は変化しなかった。5-HTアゴニストの5-methoxy-N,N-dimethyltryptamine(5-MeODMT)によるMSR抑制効果は5,6-DHT処理によって減弱したが、5-MeODMTのPSR増強効果は変化しなかった。5-HTの前駆物質であるL-5-HTPの小量は対照ラットには無効であるが、5,6-DHT処理ラットのMSRを抑制し、PSRを増強した。対照ラットにおいて、5-HT取込阻害薬のimipramineまたは5-HTの代謝を阻害するclorgyline前処理は、5-HTPのMSR抑制作用およびPSR増強作用を発現させた。 以上の結果から、5,6-DHT処理ラットにおける5-HTPに対するsupersensitivityは5-HT受容体の変化よりも、むしろ5-HT神経の消失による5-HT不活化の消失のためと考えられた。取込不活化が存在しないTRHにはsupersensitivityは見られなかった。さらにTRHの作用発現には5-HTは必須ではなく、5-HTの作用発現にTRHは必須ではないことが示された。
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