研究概要 |
(1)精製ラット42KDaコリンキナーゼ(CK)に対するモノクローナル抗体の調製: 昨年度までの研究成果から, ラット臓器におけるホスファチジルコリン生合成初段階酵素CKは一種のみではなく, 幾つかの分子種として存在すること, これらはお互いに免疫学的には類似した酵素蛋白であり, ラット腎より初めて精製, 単一化された42KDaCKに対するウサギポリクローナル抗体はいずれの主要CK分子種とも交叉性を示し, その活性を阻害すること, などが明らかにされた. 本年度はラットにおけるCK分子種の存在意義をより明確にする目的で, 精製ラット腎42KDaCKに対するモノクローナル抗体の作成を試行したが, 現在までの段階では, 分子種の解析に有効なクローンを得るに至っておらず, なお実験を遂行中である. (2)ラットにおけるCK酵素蛋白のリン酸化による活性調節の解析: 最近, ニワトリ肝CKがCAMP依存性キナーゼ(A-Kinase)の作用でリン酸化を受け, 同時に不活性化されるとの報告がなされた. また酵母のCK酵素蛋白の推定一次構造中には, そのN末端近傍に2ケ所のA-Kinaseリン酸化部位が存在するとの報告も出された. そこで本研究では, ラット(哺乳動物)におけるCKの各種蛋白質リン酸化系(A-Kinase, C-KinaseおよびCa++-カルモジュリン依存性キナーゼ)による活性調節の可能性について検討を加えた. その結果, ラットのCKではA-Kinaseのみならず他の蛋白質リン酸化系による活性調節機構が存在する可能性は否定的であった. 今後はさらに各々のCK分子種の単離・精製を成功させ, 精製酵素を用いた再構成系での蛋白リン酸化の有無あるいは他の活性調節因子の解析を手がけていきたい.
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