研究概要 |
脂肪組織にはCholesterol esterase(CEabe)が豊富に存在し血漿cholesterolの代謝に何らかの形で関与していると考えられる。CEaseはcyclic AMP依存性蛋白キナーゼ(A-キナーゼ)によりリン酸化され活性化される酵素の一つである。本研究ではラット副睾丸脂肪組織または卵巣周囲脂肪組織CEase活性の卵胞ホルモン(E)による調節機構につき検討した。 脂肪組織粗抽出液のCEase活性をcholesterol-【^(14)C】-oleateを含むミセル基質またはリポソーム基質を用いて測定すると活性の極大はそれぞれpH7とpH6にありミセル基質の方が約1.5倍活性は高かった。このため本研究ではミセル基質を使用した。牛血清アルブミン(0.05%)を反応系に添加するとミセル基質の極大は7から6に移動した。反応系へのcyclicAMP,ATP,A-キナーゼの添加により活性は著明に亢進した。反応系へのA-キナーゼのみの添加でも活性は増大したがcyclicAMP,ATPのみの添加では活性の変化はみられなかった。したがってこの系ではA-キナーゼが反応を律速していることが示唆された。2ケ月間の卵巣摘出により卵巣周囲脂肪組織CEase活性は41%減少し、卵巣摘出したラットに抱合型Eを毎日25μg1rat飲料水とともに同期間投与するとCEase活性は卵巣摘出群に比し65%上昇した。粗酵素液中のA-キナーゼ活性をγ-【^(32)P】-ATP,ヒストンを基質として測定すると卵巣摘出で38%有意に低下し、これに抱合型Eを投与することにより50%活性が上昇した。睾丸摘出によりCEase活性は変化しなかったが正常雄ラットにEstradiol benzoateを50μg1rat5週間投与すると活性は上昇した。以上の結果脂肪組織CEase活性は内因性ならびに外因性Eにより活性の調節をうけEにより活性が亢進することが示された、またEは本CEase測定系で律速的役割を示すA-キナーゼ活性を上昇させることよりEは主としてA-キナーゼ酵素量を調節することによりCEase活性を調節すると結論される。
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