研究概要 |
肝は薬物代謝を担う主要臓器であり、その機能発現には形質膜・小胞体膜の動的構造が重要な役割を果していると考えられている。この点を明らかにする目的で一連の研究を進め、以下の研究成果を得た。 1.肝小胞体膜にはNADPH・チトクロームP-450還元酵素-チトクロームP・450系によるニトロキシド還元反応を触媒する酵素系があり、その活性はフェノバルビタール投与ににより誘導された。この酵素系の活性部位をステアリン酸スピンラベル誘導体を基質として調べ、膜表面より7〜13【A!゜】の位置に局在することがわかった。一方、小胞体膜の動的構造は種々の誘導剤を投与しても、ほとんど変化しなかった。雌雄の性差に関しては、雌の方がニトロキシド還元活性は低かったが、逆に膜流動性は高った。 2.四塩化炭素,トリハロメタンをラットに経口投与すると肝小胞体膜の流動性は上昇し、その程度は四塩化炭素において最も懸著であった。これらの低沸点有機ハロゲン化合物は同時にニトロキシド還元反応の活性も低下させた。特に、四塩化炭素で著るしく、非脂質二重層の増大も認められた。 3.低沸点有機ハロゲン化合物の膜作用性を脂質過酸化との関連からin vtroで検討した。膜小胞体膜のチトロクロームP-450量,アリルトランスフェラーゼ,デメチラーゼ活性は脂質過酸化を誘発する化合物を作用させた場合に著るしく低下した。これら化合物はNADPH産生系無添加の場合、いづれも膜流動性を上昇させたが、NADPH産生系存在下では逆に流動性を低下させた。一方、ニトロキシド還元反応はこれら化合物の直接作用によっても抑制されたが、代謝産物の方がより強く抑制した。したがって、膜動的構造の変動が膜酵素の活性にも大きく影響することが示唆された。 4.フェノバルビタールの長期投与はラット肝の薬物代謝活性,ヘム酵素活性に著るしい影響を及ぼした。
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