研究概要 |
ワクチン接種により予防しうる感染症では、母親由来の免疫の残存期間が問題となる。このうち経胎盤性抗体が生後どれ位の期間持続するかを明かにする目的で、高感度抗体検出法のradioimmunoassay(RIA)およびenzymelinked immunosorbent assay(ELISA)を用いて、風疹,ムンプス,麻疹,百日咳の血清中IgG抗体および血清IgG量について、0日令から24ヵ月令の乳幼児について測定した。 1.風疹(RIA),ムンプス,麻疹,百日咳(ELISA)IgG抗体:抗体量の表示は風疹では弱陽性血清に対するcpm比(R.I.),ムンプス,麻疹百日咳では標準血清の与える検量線から求めるELISA unit(E.U.)とした。測定検体数は風疹173,ムンプス164,麻疹121,百日咳137でそれぞれ相互に重複している。出生時に抗体がない例が認められたのは風疹のみで、この場合の陰性率は37%に達した。風疹とムンプスについて母体血と臍帯血の陽性pair例は28例と6例であったが、これらの抗体移行比は1.06と1.08となり、いずれも臍帯血が高値であった。臍帯血の平均抗体量は風疹1.89R.I.(陽性者のみ、cut off 1.00),ムンプス1.431(同400),麻疹0.34(同0.16),百日咳抗PT31.4(同1.00),百日咳抗FHA86.3(同1.00)といずれも最高値を示した。その後月令とともに測定値の対数が直線的に減少し、平均値が陰性化した月令は、順に2,2,5,7ヵ月、最低値に至った月令は順に7.6,10,10ヵ月であった。最低値は風疹0.31RI,ムンプス38E.U.,麻疹0.0087E.U.,百日咳抗PT0.34,抗FHA0.23E.U.であった。 2.血清IgG量(83血清):平均IgG量をmg/dlで表わすと〓帯血1,242,1ヵ月児746,5ヵ月児が最低値426を示したのち上昇に転じた。12ヵ月児では783であり、12〜24ヵ月児は平均623〜944であった。
|