研究概要 |
我々は過去にカイニン酸,キスカル酸,ドウモイ酸,アクロメリン酸など強力なグルタミン酸アゴニストを発見し、グルタミン酸受容体サブタイプ分類の重要な礎を築くことができた。こうした実績をふまえ、グルタミン酸が興奮性神経伝達物質であると考えられているザリガニ神経筋接合部を用いて、グルタミン酸応答を強力に遮断する物質、T1-233,ツベロステモニン,MLV-208,5860,6976などいくつかの物質、を見つけた。中でもトリメチレンジアミン誘導体は、貧血性除脳固縮,薬物誘発振戦,眼振などに著効を示し、グルタミン酸遮断薬は中枢性運動疾患に有効であろうと推定された。こうした薬物群のうち、とくにMLV-6976を取り上げ、グルタミン酸遮断薬の中枢神経疾患治療薬としての可能性を薬理学的に、詳細に検討した。ラット貧血性除脳固縮においては、既知の物質よりも低い用量で用量依存性に抑制する。血圧は一過性に低下するが、他の中枢性筋緩薬トルペリゾンと比較して軽微である。実験動物の自発運動能に対しては殆んど影響を認めない。トレモリン誘発振戦は増強する傾向があるが、ハルマリン誘発振戦は抑制する。大脳皮質ニューロンにおいてはグルタミン酸応答を抑制する。ネコの脊髄反射には殆んど影響を与えない。運動神経終板に対してはかなりの高濃度にならなければ抑制作用は認められない。ザリガニ神経筋標本ではグルタミン酸応答を抑制するが、used-dependentであり、オープンチャネルブロッカーであることが考えられた。こうした実験事実をふまえ、この薬物の中枢神経疾患治療薬としての可能性を検討した。
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