研究概要 |
看護者-患者関係における言語的・非言語的コミュニケーションを計量行動学的に分析するために下記のごとき調査を施行した。1)入院または外来患者に対し看護婦が看護介入を実践し、患者との言語的あるいは非言語的コミュニケーションの場面を作った。2)当該場面のプロセスレコードより、検討資料を作成した。3)言語学的に、情報量を各種言語因子により計測した。5)各例の疾患の消長を病歴より分析した。6)3),4),5)のデータを解析し、それらの相関を検討した。 今回は、2〜3の病院の患者を被検者として、看護介入,看護面接,看護観察の場面を設定し、録音の集録を施行、研究室に戻り、そのプロセスレコードを言語学的に分析,計量行動学的に分析,数量化して、コンピュータによる多変量解析を行ない、各患者ならびに看護者の言語ならびに行動の特性を観察し、病状の経過との関係を検討した。 まず、最初の分析の目標として、時間的経過と患者ならびに看護者との関係について調査した。両者の発言時間の記録から、相手の発言中の沈黙を観察し、そのときの心境を推定し、「第一沈黙時間」と「第二沈黙時間」とを定め、その移動をグラフ化して、対話効率を判定した。患者の症状の改善のためには、ある程度の心理的満足感を前提とするが、「第二沈黙時間」の増大と共に、不満がつのり、看護指導が不徹底になる像が確認された。更に、「医療用語」の出現頻度の測定により、患者の不安緊張と看護者の指導力未熟が時間軸のパラメーターで示され、被医療者に対する医療側の言語的対応の重要性が示唆された。 非言語的コミュニケーションの計量行動学的分析,数量化に関しては今後の問題とする。
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