研究概要 |
リンパ組織毛細血管後小静脈(PCV)は再循環型リンパ球が末梢血中よりリンパ浸潤域、或は、リンパ髄に特異的にhomingする場として注目されているが、1986年それらPCV内皮細胞表面のユビキチンなるポリペプタイドが帰還受容体(homing receptor)として存在する事が相次ぎ報告され、より詳細なPCV内皮細胞の免疫学的性状の解明が急務となってきている。本課題では、それらPCVに関し、実験動物学的レベルにて、動物種差,系統差など調べるため正常マウスリンパ節PCV,ヌードマウスリンパ節PCV,NODマウス膵島リンパ球浸潤域PCV(以上ゲッ歯目)とスンクスリンパ節と扁桃PCV(食虫目)などについて超微形態的,免疫組織学的研究を行った。正常マウス及びヌードマウスのPCVの所見については既に、筆者がlmmunology 1983に報告しているが、いづれもPCVを通過するリンパ球が確認(前者ではT・Bリンパ球、後者ではBリンパ球)され、リンパ球の通過認識機構にT細胞依存免疫系が関与しない事は明らかである。今回の糖尿病自然発症マウスでは生後4週頃から膵島にリンパ球浸潤がみられるようになり6週頃から、それら浸潤リンパ球によるβ細胞破壊がみられたが、PCVは第5週頃に顕著に認められる様になり、PCVを介するリンパ球のhomingが予想された。また、5週以後、PCV周辺の膵島β細胞の破壊が急速に進行する事などから、膵島炎発現機構でのPCV免疫系の関与が示唆された。この事は上記のヌードマウスPCVの免疫学的negativeな所見と相反するがリンパ組織にのみ特異なPCVが存在する事は事実であり、今後、再考の余地がありそうである。最後にスンクスPCVでもリンパ球通過をリンパ節,扁桃PCVで認めたが、ゲッ歯目のそれらと超微形態的には差異を認めなかった。(第11回国際電子顕微鏡会議、京都に、その一部を発表した。)
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