研究概要 |
D-グルコピラノース単位が9ケよりなる、δ-シクロデキストリン11 【H_2】0の結晶構造は、R=35%の現段階では、αー,βー及びγーと同じ円形の環状構造を示し、らせん軸で関係づけられた、かご形構造をしていると言える。β-シクロデキストリン11.6【H_2】Oの低温(-80℃)構造解析から、加熱DTA加熱曲線における-46℃の大きな吸熱ピークの原因は、空洞内に閉じ込められ、disorderしている水の再配列によると結論できる。β-シクロデキストリン・サリチル酸分子複合体の結晶構造解析を行い、その結果を、β-シクロデキストリン・アスピリン・サリチル酸分子複合体のそれと比較した。これより、1)β-シクロデキストリン二分子が二級水酸基側で水素結合をした、head to head=量体をつくる。2)この空洞は約15【A!゜】の長さで、二量体中央の接合部分が最も広い空間をゲスト分子に提供している。3)この空間はゲスト分子の形状を認識し、ホストの疎水性内壁とゲストの疎水性部分がフアンデルワールス接触で、出来る犬密になるようにパッキングをしている。4)従ってβ-シクロデキストリンによるゲストの包接化を行いかつ、ゲスト分子にdisorderの無い結晶を得るには、例えば、ベンゼン環のメタ位に、メチル基をつける等で、ホストの空洞内にゲストが充満するような分子設計をする必要がある。最後に、7個のD-グルコピラノース単位より構成されるβ-シクロデキストリンのキラルな内部空洞が、光学異性体よりなるゲスト分子の立体構造を、どの程度認識し得るかを、イ)R,S-メチル-p-トリルスルフオキシド、ロ)S-メチル-p-トリルスルフォキシド、ハ)結晶性アレスリン(R,R,R-体とS,S,S-体とが対称中心で関係づけられた結晶)を、ゲスト分子に選び、分子複合体の結晶化,構造解析を行った。三者共、空洞内のゲストのdisorderが大きいが、イ)とロ)との結晶系やパッキングの様式が異ることより、立体選択性は高いと言える。
|