研究概要 |
原子変位や原子集団の配向が相転移温度を境いにして変化する相転移を、構造相転移という。定義を厳密に適用すると相転移の多くは構造相転移に分類されるため、この相転移機構を理解することは極めて大切である。 この考え方に沿って以下の研究が行われた。 1).高温における相転移研究を遂行するため、現有のX線自動回折計に設置可能な高温用クライオスタットを作製した。現有の低温用クライオスタットと併用し、以下の成果をあげた。 2).硫酸グリシン結晶は典型的な秩序無秩序型相転移をすると考えられていたが、永久双極子能率の大きさが温度依存することが分った。この結果は構造相転移が持つ複雑な性質を浮き彫りにすると同時に、構造相転移を理解していくうえで、この点を積極的に考慮しなければならないことを明らかにしており、今後の指針を与えるものとなった。 3).SrTi【O_3】結晶の相転移機構を非調和原子ポテンシャルの決定により解明するため、本科研費により導入したパーソナルコンピューターを用いて計算の能率化を計り、構造相転移機構がソフトモードにより生じることを原子レベルで明らかにした。 4).さらに、Li【H_3】【(SeO-3)-2】結晶の融解機構,DSP結晶の秩序無秩序型相転移機構,水素結合型相転移物質であるK【H_2】P【O_4】,(【NH_4】)【H_2】P【O_4】,K【H_3】【(SeO-3)-2】等の結晶の相転移機構の研究が、構造変化に注目する立場で行われており、収束の段階である。 最後に、これら一連の相転移に伴う構造不安定の研究が完結し、公表されることで、構造相転移が微視的立場からより深く理解されるようになると期待される。
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