研究概要 |
魚肉のテクスチャーが異なることは経験的に知られており, それらの要因を知ることを目的として実験を行った. テクスチャーの異なる代表として5種(カツオ, トビウオ, マアジ, マコガレイ, キチジ)を用い以下の結果を得た. 1.5魚種を4°C14日間保蔵し, それらの物性変化を針入度, 硬さ, 凝集性により測走したところ, 保蔵により魚肉が軟化する方向に移動し, その変化速度は魚種間に差があった. 抽出率およびSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動によるタンパク質の変化は14日までほとんどみられなかった. 一定の外力を加えた場合の魚肉のほぐれやすさ及び筋原繊維の断片化率は魚種間に差があり, 保蔵によりほぐれやすく, 断片化しやすくなった. 2.生肉および加熱肉の硬さと魚肉中のコラーゲン量との関連をしらべたところ, 生肉の硬い漁種は総コラーゲンが多く, 両者の間には有意の相関が見出された. すなわち, マコガレイ, キチジは生肉が硬く, コラーゲン量が多く, 生肉の軟らかいカツオ, マアジはコラーゲン量が少なかった. しかし, 加熱肉の硬さにコラーゲン量はほとんど影響を与えなかった. さしみを切る際にカレイやヒラメは身を薄く, カツオやマグロは身を厚く切ることが通常行われているが, このことは結合組織の多い魚種は身を薄く切ることで結合組織を切断し, 噛み切りやすくしているものと考えられる. 3.クリープ, コンプライアンスによって5魚種の物性は6要素モデルで表わすことができた. 瞬間弾性部はカツオとトビウオに大きく, 永久粘性部はマコガレイに多く, トビウオ, キチジがこれに次いだ. このような結果はわれわれの硬いという感覚は弾性率をとらえているのではなくて, 結合組織の噛み切りにくさをとらえているという, 先の結果を裏づけるものであった.
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