研究概要 |
高齢者ができるだけ長期に亘って身体的に自立し、生活する能力を保持し続けるための、健康維持手段として家事作業をとらえ、作業中の生理特性の検討を中心に行うとともに、高齢者のための望ましい家事作業設備の提案のための基礎資料を得ることを目的として、本研究を行った。 まず、家事作業の生理的特性を検討するため、奈良女子大学内ホームマネージメント実習室内(3LDK)で、日中約6時間に亘り連続して家事作業(掃除,炊事(食事準備,後片づけ),アイロンがけなど)を行わせ、その際の生理的指標として心拍数を連続記録し、併せて血圧,VTR撮影を行った。 その結果、作業所要は老年群の方が短く、とくに調理作業でその差が大きく、長年行って来た「慣れ」が窺える。その反面、食事,休憩など座位による非活動時間は長く、循環機能の低下から後に負担の残るという老人特有の生理機能の表れが認められた。心拍数の増加率において、とくに掃除作業では老年女性の増加率の許容値である70%を越える者が多く、掃除作業の負担の大きさが明らかとなった。 次いで、身体諸計測値をもとに体型的特徴を検討した結果、とくに女性において年代が高くなる程減少傾向が著しく、体型のくずれが目立っている。また、身体計測値をもとに作成したSliding Scaleは、短縮傾向の著しい身長を基準とするより、指極を基準とした方が、加齢に伴う身体的特徴を把握しやすいことが明らかとなった。 さらに、家事作業で頻繁に行う扉開閉時の引張り力,加圧力を測定した結果、170cm以上の高さでは、青年群に比べて両者とも測定値の著しい減少が認められ、また最も力の出しやすい高さは肘高付近にあり(青年群では肩峰高〓〓)、関節の硬化の著しい高齢者のための設備設計に際しては、十分配配する必要のあることが認められた。
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