研究概要 |
沖縄の食文化の特徴を明らかにしたいと考え, 3ヶ年にわたって研究をすすめてきた. 特に琉球王朝時代, 交易を行なった中国, 東南アジア, 日本など外来文化の影響を受けたと思われるので, 食生活の史的考察を行う必要があると考え, 文献検索を中心に, 各地域での聴取調査と資料収集を行なった結果, 次の知見を得たので報告する. 沖縄の食文化は琉球王朝時代に交流の深かった中国の影響が大きいが, 東南アジア, 台湾などの外来文化も受容し, それを融合しながら特異な食文化を形勢したいといえる. 日本の食文化との大きな違いは, 先史時代から家畜の獣肉を食用にしてきた歴史があり, 仏教の影響による肉食禁止や忌避のない肉食文化を有することである. 特に18世紀以降は豚肉の食習が定着し料理も発達した. 仏事であろうと豚頭を供え豚肉料理が主流であるのも中国食文化の影響に他ならない. 長崎の卓袱料理との関連性も把握できた. 八重山の焼香(法事)行事食事は現在も霊供盆を中心にした精進料理であり宮良殿内「祭之時膳符日記」の献立とほぼ同様である. 伝統的な献立形態が継承されているが, 食材料は多少変化し行事食の変遷をみることができた. 霊供盆の材料, 料理, 器には日本の精進料理との共通性がみらにれ, 八重山の食文化には日本の影響が濃厚である. 沖縄本島と異なるのは何故か, その形成の次期はいつ頃か, 更に検討する必要がある. 八重山の古文書, 石垣家の「膳符日記」の解読を完了し活字化した. 琉球王朝末期から近年までの約百余年にわたる行事の献立記録があり, 材料, 料理の詳細な資料が得られた. 前掲の宮良殿内の膳符日記と併わせると, 八重山の食生活史, 食文化の研究資料に役立つ. 今回は予算の都合上, ワープロによる活字化を試みたが, 今後, 解読を加え製本したいと考えている.
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