研究概要 |
1.食物繊維の定量において、Van Soest法と酵素法と比較した結果、にんじんについてみると、乾物量ではVan Soest法即ち、不溶性食物繊維は生で10.5%であるのに対し、可溶性食物繊維も含む酵素法では21.1%と著しく異なる。従って、総繊維量の定量には酵素法を用いなければならないと考えられる。しかし可溶性と不溶性食物繊維の生理的機能が異なるのであれば、両者を別々に定量にする必要があるであろう。 2.生および炒めたにんじんより分離した食物繊維の保水性とミネラル吸着性を調べた。保水性は、食物繊維g当たり対照のセルロースでは0.8gであるのに対して、生22g,炒め31gと炒め食物繊維の方が生より約30%大であった。Mg吸着性は、食物繊維g当たりセルロース0.04mg,生3.0mg,炒め1.7mgであり、保水性とは逆に生食物繊維の方が大であった。 3.にんじん食物繊維含有飼料で成長中ラットを飼育し、食物繊維の生理的効果を検討した。コレステロール添加飼料による血清コレステロールの上昇は、生食物繊維で18%,炒め食物繊維で32%抑制された。血清中性脂肪量は、生と炒め食物繊維で差がなく、両者ともコレステロール添加飼料による上昇を完全に抑制した。またコレステロール無添加飼料でも、生および炒め食物繊維は血清コレステロール,中性脂肪量を対照より有意に低下させた。しかし生と炒め食物繊維との間に差はなかった。糞重量は生食物繊維で対照より約2倍に増加し、乾燥重量も増加傾向にあったが、炒め食物繊維では対照と差がなく、保水性とは関連性がなかった。Ca,Mgの吸収率は、炒め食物繊維では対照と差がなかったが、生食物繊維では炒めより約30〜40%低値を示した。大腸の長さは、生食物繊維では対照より36%増加したが、炒め食物繊維ではやや増加する程度であった。以上、にんじん食物繊維は、炒めると性質や生理的効果が著しく変化する。
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