研究概要 |
岐阜県内各地で行われる祭礼行事の際に着装について史的, 実証的に考察する目的で調査をすゝめてきたが, 今年度は次の祭礼について調査した. 下呂の田の神祭(益田郡下呂町), 能郷の能(本巣郡根尾村能郷), 東津汲の鎌倉踊(揖斐郡久瀬村東津汲), 飛騨一之宮水無神社の祭礼(大野郡宮村一之宮), 平方勢獅子(羽島市福寿町平方), 寒水の掛け踊(郡上郡明方村寒水). 祭礼当日, その衣裳の着装状態を写真撮影し記録した. さらに, 昨年度調査した3箇所, 今年度の2箇所の祭礼衣裳について再度来訪し衣裳の各部の寸法, 構成法, 色彩, 文様等の記録をとり関係者から聞き取り等の再調査を行った. そのうちの飛騨一之宮水無神社の祭礼衣裳の概略を述べる. 御旅所神幸が行われるが, この行列は露払いをはじめ各種旗, 神宝類, 神輿, 神主, 神馬等に加えて, 鶏闘楽, 神代踊, 獅子舞の三つの神事芸能に奉仕する人々など総勢約300名で構成される. そして, それぞれの役割の衣裳を着装する. 鶏闘楽の約100名は白染という白木綿地に文様を多色に染めた着物を着流しにする. 神代踊の約100名は黒の着物に黒紋付きの羽織を着る. 他に神輿をかつぐ人々は裼衣を着装する. この裼衣は赤・橙色系の退紅に近い色の木綿地でこの上に裲襠風のものを重ねる. これは裼衣と同色の地に七宝花菱文様をこげ茶色で捺染したものである. また, 大槍を持つ人の陣羽織は茶色地に藍色で幾何文様をあらわしている. この製作年代は不明であるが, ろう染のように思われる. これは昭和62年10月3日, 日本風俗史学会において発表した. その他, 昭和62年5月16日の日本服飾学会で白山長滝神社の延年の衣裳について, また, 昭和62年5月30日の日本家政学会では大矢田神社のひんこゝ祭の衣裳について発表した. そして, 昭和63年5月21日の日本服飾学会において寒水の掛け踊の衣裳について発表する. 今後も他の祭礼衣裳について継続再調査し発表する.
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