研究概要 |
本研究は、近代日本スポーツ史研究において重要な位置をもつ、旧制高等学校におけるスポーツの成立とその発展過程を実証的に解明することを目的としたものであった。このために旧制高等学校、とりわけ1918年に公布された「高等学校令」にもとづいて全国的に設立された旧制高等学校を対象として、スポーツ展開のうえでその組織的母体となる校友会運動部に分析視点を設定し、実証的研究に取り組んできた。 2カ年にわたる全国的な史料収集活動を通じて明らかになった点は、(1)校友会運動部に関する全国的規模で収集された史料は皆無であること、(2)調査対象機関における史料が集約的に保存されていないこと、(3)したがって当初から史料収集は容易ではなく、史料の発掘とその積み上げに長時間を要したことであった。 しかし2カ年にわたる史料収集活動を通じて、旧制高等学校における校友会の組織化-その意義と理念,校友会における運動部の位置とその役割,校友会財政と運動部予算の特徴,応援団の組織化とその性格,スポーツ観・運動部観,運動部改革問題などの諸実相について、その一端を明らかにすることができた。 今後に残された課題は、引き続き校友会運動部に関する全国的な史料収集活動を推進していくことであり、これまでの実証的研究の成果のうえに、校友会運動部を全体的構造的に把握し、旧制高等学校におけるスポーツの成立とその発展過程を解明していくうえでの取り組みを、さらに強化していきたいと思量するものである。
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