研究概要 |
医学研究については, 北八ヶ岳に医学生5名をつれて登山し, 出発地点(海抜600m), 途中(1800m), 到着点(2400m)で, 検討を行った. 登山, 下山中の心電図は連続的に記録し, その比較解析を行った. また, 高校生, 主婦等を対象として, トレッドシル走行(心拍180回/分以下)の心拍, 換気, 酸素摂取量, 炭酸ガス排出量等を記録し, 此等の値から, 最大酸素摂取量を計算することを試みた. なお, この値が, どの程度心拍に依存し, どの程度換気に依存するかについては, 従来と異なる知見すなわち, 換気依存性が大であるとの所見を得ることができた. 動物実験ではネズミの低圧耐性実験を心電図を指標としてしらべ, 生存時間が室温によっても左右され, 高温では弱く, 低温では長期間生存することを認めた. なお, 高地適応動物, Pikaの肺高血圧はみられず, そのヘマトクリットも少いことを酒井らは測定し, 非適応ラットの肺動脈圧亢進と異なるとの結果を得た. なお, 高地環境で適応不全を起すと, 高山病, 高地肺水腫等を起こすが, その際DB-cAMPは症状を寛解され, この事は〓出肺灌流標本によっても証明される. また, 高地の低温環境に対し, ネズミは始期には考熱量を増加させ, 長期間の曝露で次第に予熱的な面が発達するとの所見も得られた. なお, 産熱の部位として褐色脂肪組織の関与は大であるが, この組織は栄養状態がよいと増殖することも柳平らが明らかにした. 寒冷が局所に作用する場合, たとえば兎の耳を強く冷却すると, 耐寒性の血管運動性反応が起る. その際, 血管に針で刺傷を与えると, 反応は巨大化する傾向を竹岡は見出した. この反応は登山時の凍傷発生の前の段階のモデルとも考えられる. 此等を総括し, 昭和62年11月に松本で国際高地医科学シンポジウムを開催し, 外国人及び, 国内の参加者と, 高地医学, 生物学の問題の総合討論を展開した.
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