研究概要 |
人々の健康は座して与えられるものではない. 人々はより良い健康状態をうるために, 積極的な健康づくりを行う. それは何らかの身体運動プログラムに参加することになるが, そこでは好ましい健全の確保だけではなしに予期せぬ障害をこうむることもある. それはこれらのプログラムには体調づくりだけではなく, 競争心発揮の内容が含まれているからである. 身体運動プログラムは健康文化と運動文化の二面性をもつ身体文化として把えることが出来る. 健康文化は日々の生活における行為行動を円滑に進めることが出来る体調づくり, コンディショニングが中心となる. 一方, 運動文化の中心は競い合いである. こゝでは人の心と体の最大限に正しいエネルギーの爆発を伴う能力発揮と自己の真価の追求があり, そのために相手があり, 勝利の陰には犠牲すさ存在する. 自らの肉体を傷つけ, 生命を賭する恐れもあるが, そんな競い合いの結果がもたらす感激性は何物にもかえられない大きな実りである. 本研究は後者の運動文化をとりあげ, 戦い型の運動文化, 祈り型の運動文化, 遊び型の運動文化の三つに分離し, 日本の運動文化の独自性を西欧のそれと比較研究した. 研究成果として得られた日本運動文化の特性は, 「受容・忍従・前進型」である. 具体的な表現コトバをもってすれば, 裸足, 短期決戦, 集団の各誉尊重などがあげられ, 神事との結びつきや, 儒教仏教思想を背景とした道の存在が認められる. 外来文化の中に存在する好ましいものを吸収同化し, 独自のものとしていくとき, その内容にある身体の技術とともに, 精神の技術をも汲み取り, 融合させてしまうところに日本の運動文化の特異性を見い出したのである.
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