研究概要 |
補体系は生体防御に働く血液プロテアーゼ系で、C3コンベルターゼはその中枢的な働きをするプロテアーゼである。C3コンベルターゼはC4bとC2aという二種類の補体フラグメントが分子集合した特異な分子構造をしている。 本研究では、C3コンベルターゼの活性化に関与するC4b分子上の構造要因に焦点をしぼり、下記のような研究成果を挙げることが出来た。 1)C4bのポリペプチド鎖構造解析:C4bはα(92KD),β(75KD),γ(33KD)の三本のポリペプチド鎖からなるが、これら三本鎖がどのように架橋化されているかについては明らかでなかった。我々は、C4bα鎖上のSH基がチオール・ジスルフィド結合交換反応を触媒し、C4bポリペプチド鎖を解離させることを見いだした。その交換反応で生成するポリペプチド鎖複合体の解析から、C4bはβ-α-γ鎖と配列し、β-α鎖間は二本の,α-γ鎖間は一本のS-S結合により架橋化されていることを明らかにした。 2)C4に対する単クローン性抗体を作製し、C4の活性に影響を与える三種類の単クローン性抗体をえた。これらの単クローン抗体を用いた実験から、i)C4がC4bフラグメントになるのと平行して、高次構造変化がおこること,ii)C4bのβ鎖上にはC2aの結合を不安定化する特殊構造が存在すること,iii)C2aとの結合部位は高次構造変化と平行して発現することが明らかになった。 3)C4bを緩和な条件で還元することにより、α-β鎖複合体をえることに成功した。α-β鎖複合体はC2を結合するが、C2a結合活性がなかった。これは、C4b分子上のC2a結合部位にはγ鎖も関与している可能性を示唆している。 4)C2のN末端由来のフラグメントC2bもC4b結合活性があり、C3コンベルターゼに作用して、C3コンベルターゼの解離失活化を促す働きをすることを見いだした。
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