研究概要 |
筋収縮の制御タンパクが筋形成過程、筋細胞分化などにおいて重要な意義を持っていることが明らかになった。またこれらの制御タンパクの発現が内分泌性因子や神経性因子によって調節を受けることも明らかになりつつある。本研究は筋収縮制御タンパクの中で生理機能の重要性が指摘されながら十分な解析の行われていないα-アクチニン,ビンクリン,ゲルソリン,フィラミン,スペクトリン類似タンパクなどに注目しその発現調節について追求を行った。その結果、 (1)α-アクチニンは胎生期には、胎生型とも呼べる蛋白種(isoform)が存在し、中期にはこの胎生型とは異った成体型も出現する。即ち胎生型から成体型への変換が起こることがわかった。従ってα-アクチニンは、従来の私共の研究成果をふまえると、胎生型、成体型(白筋型【I】,【II】,赤筋型)3種非筋肉型に分類出来る。筋の発生と分化の過程でこのα-アクチニンの(isoform)の変換がみられる。 (2)フィラミンおよびビンクリンについては蛋白種の変換は起らないが、やはり胎生中期に量的変化が起こる。胎生初期には骨格筋にも大量のフィラミンやビンクリンが含まれているが中期以後激減しほとんど消失する。 (3)ゲルゾリン、スペクトリン類似タンパクは、発生の過程で量的にも質的にも大きな変化を受けない。 (4)甲状腺ホルモン、ステロイドホルモンなどは、他の収縮タンパクの発現には影響を与えうるが、上記タンパクの発現には大きな影響を及ぼさない。などの新しい知見を得た。筋形成、分化における調節タンパクの発現について新しい側面を明らかにできたと考える。
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