研究概要 |
本年度は配分額が30万円であり、研究の取りまとめを行う予定であったが、昨年度に行って得た実験結果の再現性を調べる目的で、生体膜モデル中への疎水性ペプチドの組込み実験および組込まれた疎水性ペプチドの生体膜中での2次構造研究を行った。その結果、昨年度中に得られた実験事実は極めて良く再現されることがわかった。すなわち疎水性ペプチドNps(Met Met Leu)nOETおよび【CL^(○!-)】・【^(○!+)H_2】(Met Met Leu)nOET(n=6-10)は卵黄レシチンおよびそれとほぼ同一の膜厚を形成するであろうレシチン-ジオレオイルおよびジエライドイルから成るリポソーム中に全てα-ヘリックス構造を取って組込まれ、そのペプチド濃度は鎖長nが大きくなるにつれて急激に減少し、n=9以上ではこれらのリポソーム中に全く組込まれないことがわかった。さらにアミノ末端がNps基で保護されたペプチドは遊離末端をもつペプチドよりリポソーム中に組込まれにくいことがわかった。これらの結果は次のように説明されうる。α-ヘリックスを形成するペプチドの長さはn=6で約2.5,n=7で3,n=8で3.5,n=9で4nmであり、一方卵黄レシチン等から成るリポソーム中の疎水性部分の膜厚は大体3.0nmであるので、疎水性部分に安定に存在できるペプチド長も3.0nm程度であろう。実験結果はn=6は安定に組込まれ、n=7から減少し、n=8ではほんの少量しか組込まれず、n=9,10は全く組込まれなかったので、ペプチドのα-ヘリックス長と生体膜厚とが極めて良く相関していることを示している。さらにアミノ末端が遊離の方がリポソーム中に良く組込まれるのは、アンモニウム塩がリポソーム中のリン酸基と静電的相互作用して強い結合を助けることを示しており、この事実は分泌タンパク質のシグナルシーケンスがアミノ末端付近にアンモニウム塩のようなカチオンをもつことと関連して興味ある。
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