研究概要 |
スフィンゴホスホノ脂質、特にCeramide 2-aminoethylphosphonate(CAEPn)に注目して最近急速に改善されてきているリン脂質に関する免疫化学的手法を用いて比較生化学の立場から貝類臓器細胞および哺乳動物組織における局在性を調べ、分布を検討する。また、スフィンゴホスホノ脂質を組み入れたリポゾームを調製し生化学的機能を糖脂質との関連において解明することを目的として次に示す項目で研究を遂行し得た成果の概要を報告する。 (1)抗CAEPn抗血清:リポゾーム法によって免疫し6週間後に最も高い抗体価を得た。ELISA法で二次抗体としてPeroxidase標識IgGおよびIgMを用いたが、IgGに高い活性が認められることより抗体の大部分はIgG画分に存在する。 (2)抗原特異性および抗原決定基:抗血清よりIgG抗体を分取し抗原特異性とCAEPnの抗原決定基を調べた。抗原特異性を10種のリン脂質について調べたところ抗原CAEPnを除いて交叉反応は認められなかったので特異性の極めて高い抗体である。また、抗原決定基は交叉反応結果よりアミノ基,C-P結合部,酸アミド結合部の三ケ所と推定できる。 (3)ELISA法による貝類中のCAEPnの定量:10種の貝類のスフィンゴ脂質画分中の含量を測定した。CMMAEPが主成分のサザエを除いて5〜40%の含有率を示し、季節的変化も認められた。Immunostainingの結果もELISA法のそれを支持した。 (4)ホスホ型Ceramide phosphorylethanolamine(CPEA)の抗血清の調製:ホスホノ型との化学構造の差が抗体の認識の相違に反映するかを調べるために試みたが、得た抗血清はCAEPnと強く交叉し特異抗体は得られていない。現在、続行中である。 (5)糖脂質と糖脂質抗体との反応におけるCAEPnの効果:糖脂質と特異糖脂質抗体との反応にCAEPnを添加すると反応の活性化が認められた。CAEPnの添加量は生体(イケチョウガイ精子)に存在する糖脂質とCAEPnの比(約1:10)に極めて近いことがわかった。
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