研究概要 |
膜酵素の反応系のモデルとして副腎皮質ミクロソームのステロイド水酸化電子伝達系を取り上げ、それぞれ精製されたNADPHシトクロムP-450還元酵素,シトクロムP-【450_(c21)】,及びシトクロムP-【450_(17α,lyase)】をリポソーム膜に定量的に組み込み、膜酵素の反応の解析を行なった。リポソーム膜内に膜蛋白質を組み込む最も効率のよい方法は、コール酸で可溶化したリン脂質に膜蛋白質を混合し透析法によりコール酸濃度を除々に下げ、最後に高速ゲルロ過により完全にコール酸をのぞく方法であった。調整されたプロテオリポソームは平均直径600【A!゜】であり、それぞれの膜酵素の80%は外側に配向していることが蛋白分解酵素の作用等で明らかとなった。 基質ステロイドの膜への分配速度及びP-【450_(c21)】への結合速度をストップドフローを用い測定した。ステロイド基質の膜への分配速度は【10^(-3)】秒以下であり、又P-【450_(c21)】への結合速度の解析より、P-【450_(c21)】の基質結合部位は膜面内に向いており、P-【450_(c21)】は膜内に分配しているステロイド基質と反応していることが判明した。 NADPHシトクロムP-450還元酵素はその調整方法により、2つの様式で膜に結合することが実験的に証明された。その2つの様式の還元酵素は膜内のP-【450_(c21)】に対して同じ速度で電子を伝達することができ、又P-【450_(c21)】によるステロイド水酸化反応における電子伝達能においても差異がなかった。 P-【450_(c21)】とP-【450_(17α,lyase)】とP-450還元酵素を含むリポソームを調整し、二種のP-450間での還元酵素に対する競争反応を測定した。P-【450_(c21)】の方が還元酵素に強い親和性をもっていることが明らかとなった。この結果は副腎皮質ミクロソームにおいても還元酵素と相互作用しているP-450がステロイドの代謝経路を決定している可能性を示している。
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