研究概要 |
抑制性神経伝達物質γ-アミノ酪酸(GABA)の役割はシナプス前抑制と後抑制があるが, GABA_B受容体は主に前者に関わっていると考えられている. GABA_B受容体活性化後の反応を明らかにすることはシナプス前抑制の機序解明につながると考え本研究を行い, 下記のような新たな知見, 成果を得た. 1) GABA_B受容体がGTP結合タンパク質(Gタンパク)の中でも百日咳毒素(IAP)の基質になるGiおよび新しいGタンパクGoと連関することを見いだし, GABA_B受容体への情報はこれらのGタンパクを介して細胞内に伝えられる可能性を示した. 従ってGABA_B受容体はアデニル酸シクラーゼに対しては阻害的にはたらくと考えられる. 2) GABA_B受容体とGタンパクの連関はIAPと同様N-エチルマレイミドでも阻害されるが, この機構はN-エチルマレイミドとIAPがGタンパクの同一部位を修飾することによって起こることが判明した. 3) Gi, Goがカルモデュリンに作用して, その生理作用を抑制することを見いだし, Gタンパクの新しい機能を提唱した. 4) 脳内のGタンパクの半分以上はGoと呼ばれる機能不明のタンパクで占められているので, GABA_B受容体も主にGoと連関しているものと考えられる. そこでGoのαサブユニット(Goα)に対する抗体を作製し, 精製抗体を用いた高感度イムノアッセイ系を確立した. Goαの脳内分布を調べると大脳皮質に最も高く, 免疫組織化学的にはneuropilがよく染色された. 5) Goαの末梢組織における分布を検討すると, Goは神経系と神経内分泌細胞にほぼ特異的に存在するタンパク質と考えられる結果を得た. 6) Goαがヒト神経芽細胞腫や各種神経内分泌細胞腫の組織中に比較的高濃度存在することを見いだした. 神経芽細胞腫の組織からGoα様タンパクを精製しヒト脳Goαと同一であることを示した.
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