研究概要 |
この研究の目的はDNAおよびその関連物質ならびに生細胞を用いて、OHラジカルや他の類似の中間体をつくる作用源に重点をおいて、それらの役割について基礎的な観点からの知見を得ようとするものである。OHラジカルのきれいな源として眞空紫外線による水の光分解を用いた。ラジカルの直接生成の方法として眞空紫外線のソリッド状態での照射を用いた。また、Fenton型反応を経由するOHラジカルの生成の可能性もあることから、【H_2】【O_2】処理の実験も行った。【O(^-_2)】については今回充分調べることができなかった。得られた主な結果は次の通りである。 1.ヌクレオチド,ヌクレオシドは直接光吸收によって塩基部分を遊離する。2.同様の状況で、pBR322DNAは高い効率でpoly(ADP-リボース)合成酵素の活性を誘導する。3.スピントラップ法によりヌクレオシドについて塩基および糖部分へのOH付加が認められる。4.オリゴヌクレオチドdApdAは直接光吸收によりアデニンおよび5'-dAMPを同じ率で放出して分解する。しかし、間接作用モードでは酸素存在下で塩基部分の分解が起る。5.【H_2】【O_2】処理によりイースト細胞はDNAにチミングリコールが生成される。 以上、総合して考えると、DNAおよびその関連物質について、OHラジカルはH引き抜き、あるいは、OH付加反応を引き起して、以後の反応の引き金となるが、直接,間接モードによらず、糖部分が作用点となると思われる。
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