研究概要 |
以下には, 本研究の主体をなす野外調査の成果を中心にその概要を述べる. 1.シラス地域の河成段立:九州南部のシラス地域における諸河川のうち, 特に段丘が良く発達している菱田川, 肝属川, 万之瀬川流域で野外調査を行った. その結果, これらの河川流域の段丘はいずれも, シラス堆積直後の短期間に極めて急速に形成されたことが明らかになった. このうち, 特に菱田川の段丘については, 代表例として, 報告書に詳細にまとめた. 2.シラスの開析谷:シラス地域の段丘の調査と並行して, 各地で開析谷の調査も行った. その結果, シラスの開析谷には, 上述した段丘と同時期に形成され, その後は殆ど地形変化を蒙っていないものが多数存在することが明らかになった. その成果の一部は, 報告書の論文(III)に記述してある. 以上の1と2から, シラスは火砕流の堆積直後の短期間に, ほぼ現在の地形に近い程度にまで急速に開析され, その過程で河成段丘や開析谷が形成され, その後は顕著な地形変化が殆ど起きていないことが明らかになった. 3.シラスの分布:特に九州産地内各地で, シラスの開析過程のみならず, 火砕流の流動・堆積機構を知る上でも重要な意味を持つ新たなシラスの分布地を幾つか見出した. その成果の一部は, 報告書(II)に記述してある. 4.阿蘇火砕流堆積物:阿蘇カルデラの北〜東外輪山地域で, 開析地形ならびに被履火山灰層の調査を行った. その結果, 火山灰層の層序はほぼ把握できた. しかし, 火砕流堆積物そのものは, 予想以上に厚い火山灰層で露出が限られているため, 浸食地形の特性を十分には把握できなかった. 5.十和田湖・洞爺・支笏湖火砕流堆積物:調査日数および調査地域が限られているため, 必ずしも十分な成果は得られなかったが, 十和田・支笏火砕流堆積物の直上には, 火砕流の堆積直後の開析過程で生成したと思われる水成堆積物を確認することができた.
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