研究概要 |
1.教育の場に環境音楽(BGM)を導入している場合の定性的な調査結果が若干報告されている. しかし, 定量的なデータならびに評価方法はほとんど見当らない. 本研究成果報告は教育の場においてBGMの学習効果を定量的に解析するため, 作業的性格をもつ電気工学実験および座学的授業に導入した場合について検討し, 電気工学実験は勿論のこと, 座学的授業においても, その効果があることを明らかにした. 2.調査は, まず教室内における音響条件として考えられる残響時間などについて検討を加え, さらにBGMの他に, 学習効果に影響を与える自然音白色雑音, クーラ雑音および私語雑音の周波数スペクトルを検討した. 次に電気工学実験においては学生の反応をアンケートによる方法で, また座学的授業では音声品質評価に用いる音節明りょう度によって調べた. 3.以上の調査方法に基づいて実験を進め, 次の事柄を明らかにした. (1) 電気工学実験においてはアンケート調査の結果, 学生のBGMに対する反応率が大きく, 相当の効果が期待できる. (2) 座学的授業においては, BGMに対する相対受聴率はそのレベルが大きくなるにつれて, ある程度のバラつきが目立ってくる. 金管楽器のように高い周波数成分の多いソースでは相対受聴率が低下する. (3) 白色雑音とクーラ雑音がある場合は, 前者の音節明りょう度が後者のそれに比べて悪く, そしてかなりの疲労感を与える. (4) 私語雑音の場合の音節明りょう度はクーラ雑音のそれとほとんど変わらない. (5) BGMの場合は, 音節音声源のスピーカを前面に向け, 私語雑音とBGM音源のスピーカを前面に向けるときと後方に向ける場合では後者の方がはるかに効果の大きいことを明らかにした. 4.今後, 新たな評価方法や音楽ソースの選定, 騒音と音楽ソースの周波数成分の関係について検討を進めたい.
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