研究概要 |
本研究の目的は, 快適な視環境を実際に構成するために, 光の質, すなわち, 光の方向, 強さ, 拡散性など空間における光の様々な状態を的確に把握し, それを総合的に評価する技術とその評価基準を確立すること, および, そのための測定装置の開発である. 先ず, 本研究に関連する内外の研究の現状を把握するために, 視環境の快適性を評価に関する研究資料を集め, それらを検討し, 本研究の基本方針を立案した. すなわち, 視環境の総合的な評価のための視環境要素の選定, そのための測定装置の開発, 視環境の総合的な評価システムの実際的な検討である. 視環境の総合的な評価のための視環境要素としては, 水平面照度, 鉛直面照度, スカラー照度, ベクトル照度, 平均円筒照度を考えることとした. これらは従来の測定装置ではそれぞれが個別に測定されているが, 従来の研究でも関連させて総合的に扱っている. したがって, 新たに同時測定が可能な測定機器の開発が必要であると考えた. そこで本研究では, これらが同時に測定できる測定装置として六面照度計を開発した. 六面照度計に関する理論的検討を行った後, 六面照度計を設計し, 試作した. 昭和60年度に, 試作した六面照度計を用い, 一時的な測定, 長期間の連続測定など実際に使用して検討した. この六面照度計に更に改良加え, 受光部, および, 受光回路の自作は将来の課題として残したが, 昭和62年度に, 信頼性と安定性の高い六面照度計の試作を一応完了した. この改良した六面照度計による視環境の快適性の測定をおこない, その結果, 改良した六面照度計は, 実際の室で使用し, 実用性が高いことを確認した. 視環境の総合的な評価システム・評価基準のは, 六面照度計を多くの研究者が長期間使用し, 視環境要素の測定を蓄積し, 検討と改良を加え, そのコンセンサスを得て, 初めて確立するので, 本研究では, 蒐集した内外の視環境要素の評価基準を参考にし, また, 本研究による測定結果に基いて, 現時点で可能な範囲での評価を試みた.
|