研究概要 |
グラウトは, き裂岩盤や軟弱岩盤の改良を目的として, 岩盤の間隙に薬液を注入して固結する工法である. この目的を達成するためには岩盤をゆるめないよう薬液の注入圧と注入量を制御する必要がある. 本研究では, この観点に立脚して初年度からグラウトの現場試験に着手し, 注入過程におけるAE活動を観測した. この結果, 岩盤状態が良好な場合には, グラウト・ミルクがリークする過程で外部からの注入仕事に応じてAE発生頻度が増大し, き裂の進展・開口挙動を非常によく監視することができた. しかし, 岩盤状態が悪い場合には, AE波がトランスデューサへの伝播過程において大きく減衰し, き裂の進展挙動を監視するのに必要な数のAEを検出することができなかった. これより, グラウト施工岩盤から信頼性の高いAE制御信号をウェーブ・ガイド法によって検出できるとは限らないとの見解を得た. 以後, この見解に基づいて研究計画を変更し, 軟弱岩盤から信頼性の高いAE信号を検出する方法について研究を進めた. AE検出方法の研究に当っては, 新たに岩盤変形に応じてAEを発生するAE計測棒を開発した. このAE計測棒は, グラス・ウールを混入したロジンからなっており, 引張や曲げ変形に比例してAEを発生する. 更に, AEが計測棒を伝播するときの減衰を少なくするために, AE計測棒の構造を改良した. これらの結果, 信頼性の高いAEが検出できるようになり, AEの発生率および発生総数からき裂の進展, 開口挙動を監視することが可能となった. 本研究では, 当初AE信号による制御機能を有した注入機を開発することを最終目標にしていたが, 最終年度内にこの注入機を開発することができなかった. 現在, 信頼性の高いAE制御信号を検出できるようになったので, 今後とも注入機の開発を継続したい.
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