| 研究概要 |
高レベル放射性廃棄物の地層処分に関連して、ガラス固化体の安全性評価の基礎データーを得るべく、硼珪酸塩ガラスの熱水条件(200℃,15.3bars)における脱ハリについて研究した。Si【O_2】-【B_2】【O_3】-【Al_2】【O_3】-【Na_2】Oを基本とするガラスに、Cs,SrまたはCs+Srを加えて、脱ハリ開始の遲速、脱ハリに際してのCs,Srの挙動について検討した。基本ガラスに【K_2】,CaO,【Fe_2】【O_3】を加えて、脱ハリに及ぼす影響についても検討した。ガラスの結晶化は割目に沿う表面に微細な結晶子が生成することから始まるが、その開始時期はガラスの組成によって著しく異なる。脱ハリの生成物は、沸石類のアナルサイト系結晶と各種の硼酸塩が主体で、Srの一部はアナルサイトに入るが他は硼酸塩として晶出し、Csは主としてアナルサイト系のポルサイトに取りこまれる。このほか、アナルサイトのAlをBが置換したシアルサイト,石英,中間生成物としてモルデン沸石などが検出された。基本ガラスの成分以外では、【Fe_2】【O_3】はガラスの安定性を増す方向に貢献し、結晶子の晶出開始を遲せ、ガラスの溶出速度も遲くする傾向が認められた。これに対し、【K_2】Oはガラスの安定性を著しく低減し、結晶子の晶出は加熱2〜3日で始まり、ガラスの溶出速度も極めて速くなる。CaOは【Fe_2】【O_3】【K_2】0の中間に相当する影響を与える。無水状態のガラスの安定性と比較するため、熱水実験に用いたものと同じガラス試料を200℃で6ケ月間加熱したが、ガラスの脱ハリの徴候は全く認められなかった。以上の結果から、Sr,Csを含む硼珪酸ガラスは無水状態では安定であるが、水が滲透した場合には脱ハリが進行し、アナルサイト系結晶と硼酸塩が形成される。Cs,Srはこれらの結晶に取りこまれるので、浸入する水量にもよるが、これら元素の固化体系外への漏出を防止することは可能と推定される。
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