研究概要 |
半導体や金属結晶の内部に存在する転位などの欠陥を観察するX線トポグラフには現在ラング法が最もよく使用されている。この方法は特性X線を用いる方法であるため、試料のセッティングが難かしく、また、吸収が大きくて厚い試料を使えない等の欠点があり、重い原子を含む場合にはまず試料を薄くする必要がある。本研究は北大に設置されている超強力X線源から放出される硬くて高輝度の白色X線を使ってトポグラフを撮り、その透過性を利用して厚くて大きな単結晶の完全性の試験を簡単に行う方法を開発する目的で行われた。まず、白色X線トポグラフ法の分解能を支配する重要な因子であるX線源の大きさを極力微小化するため、高エネルギー(120kv加速)用の特殊な電子銃を設計試作した。この電子銃は、ターゲットに対する相対位置を変えることができる二重ウエネルトカバーを備え、バイアス電圧を第一および第二ウエネルト電極に独立に与える構造になっている。また、真空を破らずにバイアス電圧を調整する新しい機構をX線発生装置本体に取り付けた。この電子銃を微調整して、エミッション電流値を減らすことなく最も小さなX線源を得る実験をくり返し行なった結果、最小焦点サイズ(光源強度分布曲線の半価幅)として副焦点部を除いて0.08mm×0.90mmを得、ほぼ目標値に達した。ついで、この微小白色X線源によりGe,Zn,Cu,Fe、などの純物質、或いはGaAs,InP,CdTeなどの半導体のように比較的重い原子からなる厚くて大きい単結晶板のトポグラフ撮影を試みた。光源、試料、乾板の配置を吟味し、またフィルターの種類や厚さを検討した結果、薄い試料のラング写真に匹敵する分解能を持つ質のよい白色X線トポグラフを得ることに成功した。
|