研究概要 |
種々の膜厚の【LaNi_5】薄膜に吸収-放出される水素量を、水晶式質量モニタ法(QCMM)を用いて定量した。吸収水素量は、膜厚が大きくなるに伴い増大した。厚さ0.6μmのものでは0.7±0.2個、1.8μmでは2.0±0.1個の水素が【LaNi_5】1式量あたり吸収される。また高温の方が吸収水素量が少ないことがわかった。アルミニウムおよび銅箔上に形成された【LaNi_5】膜は、10μm以上の膜厚においても水素吸収一放出による破壊が起きなかった。混合気体から水素を効率よく回収する目的で、【LaNi_5】薄膜を用いた水素分離膜の開発を試みた。多孔質金属にNiまたはAlをメッキし、その上に【LaNi_5】を蒸着させた試料の水素分離能を調べた。【H_2】-【C_3】【H_8】,【H_2】-【CH_4】,【H_2】-【N_2】および【H_2】-Ar混合ガス(【H_2】80mol%)について試験したところ、Niを用いた場合、87〜90%,Alをはさんだ場合は98〜99%の高い純度の水素が得られた。ここで【LaNi_5】膜は容易に水素分子を解離させること、および多量の水素を吸収することによりNiやAl表面上の水素濃度を著しく高めることの2つの役割を果たしていると考えられる。基板として多孔質金属の代りにテフロンやポリイミド膜を用いた場合、【H_2】-Ar(【H_2】50mol%)混合ガスから最高97%の水素が得られた。さらに、H:D=9:1の混合ガスを用いて水素同位体分離を行ったところ、分離係数(H/D)が約1.4であることがわかった。 アモルファス【WO_3】膜上に【LaNi_5】薄膜が形成された試料を水素雰囲気下に置くと、a-【WO_3】膜の色が青色に着色した。a-【WO_3】膜と【LaNi_5】膜の間にCu膜をはさんだサンドウィッチ型の試料については、a-【WO_3】の着色は、表面がLa【Ni_5】膜によって覆われている部分のみに起きた。この現象を利用して種々の金属の水素透過性を調べたところ以下の順となった。(【LaNi_5】,Pt,Pd)>Fe>(Ni,Co,Ti)>Mn>Cu>(Mg,Cr)>Al>(Au,Ag,Zn)
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