研究概要 |
高分子ゲルマトリックス中に固定化した微生物を水素高圧下で用いることにより, 標準状態で進まない反応や平衡が大きく反応物側にずれている反応を円滑に進めることを考え, 固定化微生物を用いる連続高圧水素化バイオリアクターの試作とその応用を行った. まず, 固定化微生物による水素高圧下でのNADHの再生を行ったところ, 固定化Clostridium butyricumを用いてすいそ100気圧, 5時間の反応でNAD+の100%がNADHへと変換していた. また, Nocardia opacaはNADH再生能, フェニルアラニンデヒドロゲナーゼ活性を有していたことから, この菌を固定化し水素高圧下でのフェニルアラニン生成へ応用した. 10時間の反応で変換率82%でフェニルアラニンが生成された. さらに固定化N.opacaによりフェニルピルビン酸メチルエステルから有機溶媒中でフェニルアラニンメチルエステルの生成が可能であり,酢酸エチルを用いた場合では変換率は80%となった. そこで酵素サーモリシンを組み合わせることによりZ-アスパラギン酸とフェニルアラニンメチルエステルからZ-アスパルテームの生成が可能になり, このときの変換率は86%となった. このように固定化微生物を用い水素高圧下でフェニルアラニンやその誘導体の生成が安定に, しかも高収率で行えることが示された. 次に, 固定化微生物および金属触媒による脂肪酸の水素化を試みた. パラジウム触媒を用いてリノール酸を水素化し, オレイン酸を得ることができた. さらに, オレイン酸は光硬化性樹脂に固定化したルーメン菌Fusocillus spによりステアリン酸へと水素化されることが示された. 以上の結果, 水素高圧下において固定化微生物によるフェニルアラニンなどの有用物質の生産, 脂肪酸の水素化が行えることが明らかになった. これより, 連続高圧水素化用バイオリアクターの応用に関する基礎的知見が得られた.
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