研究概要 |
血中アドレナリンおよびノルアドレナリンについては、交感神経系の活動性を鋭敏に示す指標として日常臨床検査においても測定されるようになり、その生理的あるいは病態代謝的意義に関して多くの知見が蓄積されつつある。一方、第3の内因性カテコールアミンであるドーパミンについては、主に分析上の問題点から研究が遅れている。ヒト血中ドーパミンはその大部分が硫酸抱合体として存在しており、この抱合体の体内動態についてはさらに知見に乏しい。本研究では、われわれが開発してきた高速液体クロマトグラフィー-蛍光法の技術を応用して、生体試料中のドーパミンおよびその2種の硫酸抱合異性体を全自動分析できる装置を開発し、以下のような知見を得ることができた。(1)ドーパミンについては血漿1ml,ドーパミン硫酸抱合体の2つについては血漿0.1mlを用い、感度よく測定できる高速液体クロマトグラフィーシステムを開発し、また、ドーパミン硫酸抱合体代謝に関与する酵素活性測定にも応用できた。(2)イヌ末梢組織にはそのほとんどが3-0-硫酸抱合体の型で存在し、腎臓,肝臓,小腸,心臓の順に高い含量を示した。(3)イヌ肝臓,腎臓には高いフェノールスルホトランスフェラーゼ活性が認められた。(4)イヌ肝臓のアリルスルファターゼによって4-0-硫酸抱合体は容易に脱抱合したが、3-0-抱合体ではほとんど脱抱合がおこらなかった。(5)イヌにドーパミン硫酸抱合体を静脈内投与したときの半減期は3-0-抱合体が67分,4-0-抱合体が53分であった。この時,循環動態には全く変化が認められなかった。(6)ヒト血中ドーパミン硫酸抱合体の大部分は3-0-硫酸抱合体であり、食餌摂取後に著名な増加が観察された。また、早朝空腹時の本態性高血圧患者血中では正常血圧者より抱合体のレベルが有意に高値を示した。(7)ヒトにドーパミン,L-ドーパを経口投与したとき速やかな3-0-硫酸抱合体の増加が観察された。
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