配分額 *注記 |
12,500千円 (直接経費: 12,500千円)
1987年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
1986年度: 3,500千円 (直接経費: 3,500千円)
1985年度: 8,000千円 (直接経費: 8,000千円)
|
研究概要 |
第一の実験目的は, ヒトを含む動物細胞を無血清, 無蛋白培地で永続的に増殖させる方法を確立し, 第二は, 細胞が産生する生理活性物質を見出だし医学研究に応用し細胞の機能を明かにすることである. この実験で, 正常細胞は増殖しないが, 有血清で株化した細胞は改変HamF12培地で培養すると血清, ホルモン, 蛋白質を培養液中に添加しなくても増殖することを見出だした. この無血清培地で, マウス細網細胞株2系, 線維芽細胞株2系, ヒト線維芽細胞株, 腎臓上皮細胞株, 悪性奇形腫細胞株等の細胞を長期にわたって増殖させることに成功した. これらの細胞株は無血清培地中では, 形態学的に2群に分類された. すなわち, 浮遊状態で増殖する系と壁着伸展して増殖する系があり, 線維芽細胞株(m cells)は前者で, 細網細胞株(SP,MR.cells)は後者に属する. 前者は細胞接着蛋白質であるフィブロネクチンを産生し, 後者はフィブロネクチンは産生しないがその受容体を産生している. 他方, 無血清培養法によりフィブロネクチンとは異なる70K細胞接着蛋白質をヒト血清中に見出だし, モノクローナル抗体を作成した. この70K細胞接着蛋白質は, 無血清培養上記細胞からは産生されていないが, ヒトの組織を免疫組織化学で調べてみると肝臓, 膵臓などの上皮細胞で産生されていた. これらの細胞接着蛋白質は癌細胞の転移にも重要な役割をはたしている事が判明した. また, これらの細胞接着蛋白質の機能を阻害する蛋白質も無血清培養法により見出だされた. ここに記載した無血清, 無蛋白培養法は, 細胞が産生する生理活性物質を他種血清の混在しない条件下で純粋にしかも大量に精製することを可能にしたのみならず, 未知の生理活性物質を培養液中に発見することができる. また, 血清中に存在する未知蛋白質の機能を無血清培地中に添加することにより細胞への情報伝達機構を明らかにすることが可能である.
|