研究概要 |
中枢神経系の限られた局所における神経伝達物質或いは薬物受容体の分布局在を知る方法の1つにin vitroマクロオートラジオグラフィーがある. 本研究ではこれによって得られた像を, ^3Hの放射活性のstandardを用いて定量的に解析し受容体の絶対数を算出する方法を確立することを目的とした. muscarinic acetylcholine receptor(mAChR)のantagonistである^3H-QNBを用いてstandardを作ることを試みた. 正常ラット脳のhomogenateを決められた条件下で3H-QNBとincubateし, その一部は放射活性と蛋白質を測定し3H-QNBと受容体の結合量をmal/mg proteinの単位で求めた. 残りのincubation溶液は遠心してペレットを作成し, 通常のマクロオートラジオグラフィーを行う為3H-sensitive filmをかけた. オートラジオグラムの濃度の測定や放射活性との関係の決定にはZeiss社のIBASIIを用いた. その結果, optical densityと組織中放射活性はln-ln変換すると直線関係にあることがわかった. このようにしてin vitroオートラジオグラフィーから得られた受容体の絶対値と, 従来から広く行われている受容体結合実験から求められた値とはほぼ一致しており, 我々の作成したstandardは十分使用に耐え得るものと考えられた. このstandardを用いて受容体の正常な脳内分布や個体発生学的変遷, また変性性神経疾患の脳における変化を定量形態学的に観察した. 具体的にはMPTPにより誘発されたサルのパーキソニズムの脳, 脊髄小脳変性症やアルツハイマー病のヒト培検脳, これら疾患のモデル動物の脳について各種神経伝達物質受容体の分布異常を調べた. またラット脳を用いてmAChRのサブタイプ別の個体発生, ニューロテンシンレセプターの発生に伴なう変遷を観察した. 定量的in vitroオートラジオグラフィーは, 信頼度が高く応用範囲の広い実験方法であることが知られた.
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