研究概要 |
白血病の診断に、糖鎖抗原を認識する一連のモノクローナル抗体を応用し臨床的に活用するのが本研究の目的である。60,61年度にわたって手持ちの十数種の抗糖鎖特異的モノクローナル抗体を用いて各種正常血液細胞、および白血病細胞における糖鎖抗原を検索した。幹細胞の培養レベルにおける糖鎖抗原の発現を調査することを主な目的の第一とし、また第二には、白血病細胞に極く微量に存在する異常抗原に対するモノクローナル抗体を作成する方法を樹立することを目的とした。第一の企画は、末梢血塗沫標本、骨髄塗沫標本に加えて、常法によりヒト骨髄細胞よりBFU-E,CFU-C,Mega-Cおよびマクロファージのコロニーを作成し、毛細管ピペットにより各コロニーの細胞を可及的純粋に回収し、各種の糖鎖特異的モノクロナール抗体を用いて間接蛍光抗体法によって抗原の有無を検索した。SSEA-1、ポリフコース,シアリルSSEA-1,フコシルSSEA-1の4種の糖鎖抗原を検索したところ細胞系により出現する糖鎖抗原に特色があるので、将来的に臨床応用が可能であると考えられた。また、前骨髄球に特異的に存在する糖鎖を、IA4モノクローナル抗体が認識する事が判明した。この糖鎖の構造は不明のままである。次に、第二の企画は、白血病細胞に極く微量に存在する4糖残基からなる異常糖鎖抗原(ラクトガソグリオシド)に対してモノクローナル抗体を作成した。本抗原は微量抗原であるので、通常の精製法では抗体作成に必要な抗原を得られないため、抗体作成には工夫を要した。すなわち、この糖鎖抗原を新たに有機化学的合成法で合成し免疫源とした。有機合成した糖鎖抗原に対するモノクローナル抗体の作成は世界初である。
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