研究概要 |
本研究の目的は、ウォータージェットを利用した手術法を臨床の場において応用可能にすること、即ち手術装置として不可欠な消毒減菌法に留意し、手術操作性が良く安価で安全性の高いシステムを開発することにある。これらを解決するため、次の項目について設計,試作検討を加えた。1. 加圧装置は種々検討の後、従来用いていたプランジャーポンプ方式をやめ、代りに人工心肺などに多く使用されているローラーポンプ方式とした。開発されたローラーポンプのスリーブやローラーは約15kg/【cm^2】の圧に耐え、回転数は毎分60回まで安定に動作した。2.ローラーによって加圧されるチューブは医学的に安全な各種のチューブを検討し、最終的に内外2チューブ方式とし耐圧、耐摩耗性を高めた。3. ハンドピースは、1)始め金属性のノズルを検討したが、これは高価で消毒が難しくさびやすいことから、ノズルとして硬質プラスチック材を選び、多種の径を持つノズルを試作しハンドピース本体にねじこむ方式とした。2)ウォータージェットのスイッチ操作はハンドピース内にてチューブを圧迫するレバー方式とし、簡便で操作性と安全性を向上せしめた。4. 手術による感染の危険性を低下させるため、給水バッグ,加圧チューブ,連結チューブ,ハンドピースの全コンポーネントはあらかじめ個別に滅菌し互いに耐圧ルアーコネクターで接続可能として、安全性を高めた。5. このようにして試作された最終モデルのシステムは、連続波、パルス発振レーザー光によりジェット流の性状がチェックされた。操作性、手術能については家兎を用いた動物実験により検討された。その結果、本方式は、切開洗浄能力共に従来のプランジャー方式をしのぎ、ハンドピースのプラスチック化、連結チューブの細径軽量化と相まって非常に使い易いものとなった。そして、本方式のジェット流は脈動流であり、病理組織学的な所見では血管の剥離残存効果も従来の定常流に対し向上した。
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