研究概要 |
本研究では膝関節の不安定性を調べる徒手検査法を定量化する目的で、6自由度膝関節ゴニオメータの製作とその応用を試みた。 まず従来回旋という術語が明確な定義なしに用いられてきたために、混乱や不都合が生じたことを指摘し、明確な定義を新しく与えた。剛体(下腿)の姿勢を表わす3ケの角度はオイラー角(φ,θ,Ψ)で与えられ、これらはそれぞれ屈伸,内外反,内外旋角度に対応する。ある時刻【t_1】と【t_2】での回旋角を【Ψ_1】と【Ψ_2】とすると、この間の回旋量は【Ψ_2】-【Ψ_1】と考えられてきた。しかしこれは特別な条件でのみ成立するに過ぎず、一般的には角速度の合成ベクトルとしてW=-dφ/dt sinθ+dΨ/dtを求めこれを積分することにより真の回旋量が得られる。次に上述した3ケの角度の他に、上下,左右,前後の変位に対応する計6自由度を持つゴニオメータを製作した。ただしセンサは3ケの角度と前後方向変位に対応する4ケを用いている。これらのセンサの出力はそのまま屈曲角等の諸量に対応しており、特別の処理や計算は必要ない。また膝関節のどのような動きに対しても無理な力が生じることもなく干渉もない。このゴニオメータを用いて正常膝10例および疾患膝3例について、前後方向引出しテスト,内外反ストレステストや自動運動による内外旋量などを計測し、疾患例についてはX線計測の結果とも比較した。症例数が少いため今後さらに多くのデータを集める必要があるが、本装置の計測値とX線計測の値はほぼ一致しており、疾患例の結果も損傷部位と対応していた。 筆者らは現在、無拘束型の膝関節運動計測装置についても検討している。具体的には加速度計を静的な傾斜計として用い、2ケの加速度計と1ケの磁気方位センサを組合わせて3ケの角度を計測するもので、予備実験を行ってその可能性を確めた。
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