研究概要 |
コラゲンやムコ多糖のゲル内でりん酸カルシウムの結晶を生成させ, その過程を顕微鏡下で観察できる装置を試作した. この装置は上下にCa溶液とP溶液を還流させ, イオン透過膜を介してCaイオンとPイオンを中央にある反応室内のコラゲンやムコ多糖のゲル内に浸透させ, このゲル内でりん酸カルシウムの結晶が生じてくる過程を偏光顕微鏡で観察できるようにしたものである. この装置に溶液の温度を一定に保つ恒温系装置と溶液のpHを測定し, 記録させるとともにpHを一定にする制御装置をつけた. 還流・反応チャンバーは実体顕微鏡で観察するプラスチック板製マクロ観察用と偏光顕微鏡(40〜400倍)で観察するステンレス鋼製のミクロ観察用を作った. イオン透過膜として透析膜が, CaとPの環液液は0.3MCaCl_2. 0.3〓Na_2HPO_4・12H_2Oに0.15MTris緩衝液と0.05MNaClを加えたものがもっとも適していることがわかった. 液温は35〜36°Cとし, pHは7.4〜10の範囲内とした. I,II,III,IV型コラゲンのゲル内に生じた結晶は細長い板状で, コラゲンの型による結晶の形や大きさの差はなかった. X線回析像はオクタりん酸カルシウムのパターンを示した. コンドロイチン硫酸A,B,Cのゲル内で生じる結晶はコラゲンゲル内に生じるものに比べ, 結晶は細くて短く, 互いに集まって大小の球状塊を形成した. X線回析像, 水酸化アパタイトの結晶パターンを示していた. 対照としたゼラチンゲルでは結晶の形や大きさはコンドロイチン硫酸ゲル内のそれに似ていたが, X線回析像はコラゲンのそれに似ていた. コラゲンとコンドロイチン硫酸の混合ゲル内に生じる結晶は細かくて短い板状で, 球状塊を示し, コンドロイチン硫酸ゲルのそれに似ていた. 一般に酸性になるとオクタりん酸カルシウムの結晶が生じ, アルカリ性では水酸化アパタイトが生じ易い傾向がある. 結晶形成には5日以上の還流時間が必要であると思われる.
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