研究概要 |
本研究は歯および歯周組織の形態を立体X線撮影により立体像としてとらえ、臨床の場で役立てることを目的としたものである。今年度は歯科用立体X線撮影装置を用いて、ヒト抜去歯,上下顎骨標本,少数の臨床例において立体X線撮影を行なった。 撮影条件は、2本のX線管球から照射する主線が交差する角度を10度とした。歯周ポケットをX線造影するために直径0.4mmおよび0.5mmのステンレス鋼線を使用した。立体X線像は立体観察装置を用いる方法と調節斜視法により観察した。この方法により以下の知見を得た。 (1)歯、および歯周組織の立体X線撮影により、単純撮影のみからでは知ることのできない各種の情報を知ることができる。すなわち、歯冠概形,咬頭頂,歯髄腔の形態,歯根の方向などを立体視することができた。金属製探針を歯周ポケット内に挿入することにより、それらの特徴がさらに明瞭になるとともに、歯周ポケット底部の概形および歯に対する相対的位置を知ることが可能であった。 (2)観察者により得られる立体像の良否に差が認められた。これは各観察者によって立体像観察の習熟度が異なることと、立体視が主観的な要素を含んでいるためと考えられる。立体X線像の観察は口腔内組織の各部位の立体的位置関係や相互関係を推測する手段としては有効であるが、その位置を定量化して知ることは難しい。X線像から歯周組織の位置,骨塩量などを求める方法として、歯間中隔の骨頂側の高さの測定,および面積の計測,光学的濃度の計測などが行なわれている。今後は立体像における角度や距離を客観的な数値として測定できる立体計測法を考案する必要がある。
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