研究概要 |
歯科材料の第2段階の安全性試験である口腔粘膜刺激試験:埋植試験について既存の方法の比較研究を行い、また新しい組織刺激性の非動物実験の開発研究を行った。(1)口腔粘膜刺激試験法:雄性7週齢ゴールデンハムスターの頬袋にNiCr合金及び即時重合レジンの円板型試験片を粘膜面に接触させて縫合した。2週間後に粘膜の病理組織検査を行った。レジン投与群の粘膜には肉芽増殖,発赤などが認められた。ハムスター頬袋はモルモット口腔粘膜に比し、角化層が薄く刺激に対する感受性が高かった。(2)埋植試験法:ハートレー系雌性モルモット,ウィスター系雌性ラット,日本白色雌性ウサギの背部皮下にNiCr合金の円柱状試験片をテフロン管に挿入した状態で埋植し、2,12週後に埋植部位の病理組織検査を行った。対照群には同型のテフロンを埋植した。出血,充血の出現率は3種動物に差がなかったが、重度の炎症性細胞浸潤の出現率は2、12週でモルモットでは対照群0%に対し29、50%,ラットでは対照群25、5%,NiCr合金群で50、21%,ウサギでは重度のものはいずれも0%であった。また肉芽形成率は12週でモルモット,ラット,ウサギでそれぞれ39、11、25%であり、3種動物中モルモットが最も感受性が高く、埋植試験動物として優れていることが明らかになった。(3)組織刺激性の非動物試験法の開発:上皮性培養細胞(MDCK)をコラーゲン塗付メンブランフィルター上に播植し、炭酸ガス細胞培養器中で培養し、単層上皮に分化させた。培養細胞の単層上皮を短絡電流(SCC)測定用のチャンバーに装着し、液相に検体を投与し、短絡電流の変化を指標として上皮に対する検体の作用を明らかにする方法を開発した。〓膜側液相にCd【Cl_2】2×【10^(-1)】M,【Na_2】Cr【O_4】2×【10^(-2)】M投与するとSCCは降下した。単層上皮に検体を投与し、障害細胞より培地中に放出される乳酸脱水素酵素活性を指標とした毒性評価も可能であった。
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