研究概要 |
熱を指標とした線溶酵素の簡易測定方法の開発を試みた. 熱測定はLKB2107マイクロアロリーメーター(フロー・スルー・セル)を一部改良して行った. 基質大過剰の条件で, 反応が定常状態に達している反応溶液を熱感部に導入し, 単位時間当たりに発生する熱量として酵素活性を評価する方法を採用した. まず2成分系における反応熱測定を行った. 線溶酵素としてプラスミンを用いた. プラスミンの基質としてフィブリン, フィブリノーゲン, カゼイン等について反応熱を測定し, 最も高い反応熱を示し, かつプラスミンの濃度に対して広範囲で直線関係を示す基質としてフィブリノーゲンを選んだ. 次に3成分系における反応熱測定方法の確立を行った. すなわちウロキナーゼによりプラスミノーゲンからプラスミンが生じ, プラスミンがフィブリノーゲンを切断する反応に伴う熱測定である. プラスミノーゲン→プラスミンの反応熱は, 実質的にはOとみなせることを確認しているから, この3成分系に発生する熱はプラスミンによるフィブリノーゲンの分解熱と考えられる. この熱を測定することによりプラスミンの生成量が, 従ってウロキナーゼの活性評価が可能となる. ウロキナーゼ0.5〜20U/mlの範囲で, 活性-熱量関係が良い直線性を示した. 測定限界は0.5U/mlであった. さらに, フィブリン分散系の粘弾性挙動, または光透過を指標にした線溶酵素の活性評価の方法の検討もあわせて行った.
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