研究概要 |
ヒト尿中には沢山の神経伝達物質およびその代謝物が存在する. 神経芽細胞腫並びに褐色細胞腫において尿中カテコールアミン関連物質が上昇するといわれており, 本研究は, こらの臨床診断に役立つ測定法を開発することが目的である. 尿中カテコールアミン代謝物ホモバニリン酸やバニルマンデル酸は高速液体クロマトー電気化学検出器により定量することができる. 私共は, これらをボルタメトリーにより測定することができることを既に報告している. 今回は, 同様なボルタメトリー法によりカテコールアミンを定量する方法を検討した. 尿中にはドーパミンの他に尿素, カテコールアミンの代謝物であるDOPAC, ホモバニリン酸等が多く存在する. ドーパミンを他の物質から区別するため, コンピュータコントロールできるボルタメトリーのプログラムを作製し, 試験管内での実験を行った. この方法により, ドーパミンは10-7Mまで測定でき, DOPACとアスコルビン酸が共存しても測定が可能であった. 次に, 正常尿中のカテコールアミンを測定したところドーパミンは殆ど検出できなかった. 正常尿におけるドーパミン量は10^-8M程度とされており, 今回用いた方法の検出感度の限界より劣いためであった. 私共は, 高速液体クロマトー電気化学検出器により, 尿中カテコールアミンを測定してきたが, この高速液体クロマトを用いる方法は, 1検体を測定するためには20分以上かかり, 尿中カテコールアミンのマススクリーニングとしては不適当である. 今回, 開発したコンピュータコントロールボルタメトリーは〓度がまだ良くないが, 尿中カテコールアミンを濃縮して測定すれば, 臨床検査に有用な手段となると思っている.
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