研究概要 |
電気伝導度の変化を利用して繊維集合体の浸透ぬれ速度を測定する装置を試作し測定を行った。直径10mm,高さ3mmまたは7mmの円筒状テフロン製セルに繊維,織物あるいは濾紙を詰め,試料の上下両端に直径16mm,厚さ0.5mmの白金板に0.5mmの穴を37個あけた白金電極を設置し,下部電極に電解質水溶液を接触させると,液体は毛管現象によって固体試料内を上昇する。電極間の電導度の経時変化を求め,試料内の最も短い毛管に液が浸透するのに要する時間と考えられる降伏時間【t_0】および電導度-時間曲線の初期勾配Sをぬれ速度のパラメーターとした。【t_0】の増加とSの減少はぬれ速度の減少をあらわす。セルロース濾紙,ポリエステル布,ナイロン繊維を用いて測定を行った結果,本装置が繊維集合体の浸透ぬれ速度を調べるのに適切な装置であることがわかった。そこで試作装置を用いて各種繊維集合体(シリコン加工したセルロース濾紙,柔軟加工したセルロース濾紙など)の浸透ぬれ速度を調べた。浸透ぬれが起こらない試料では,電導度計の代りに絶縁計を用いることにより、吸湿現象を調べることができた。また、アニオンおよびカチオン界面活性剤水溶液による繊維集合体のぬれ速度測定から,固体試料への界面活性剤の吸着層構造を検討することができた。繊維間隙を毛管とみなしたときのモデル実験として、ナイロンで被覆したガラス管における毛管現象が調べられた。ぬれの尺度となる接触角はナイロンの等電点のpH付近で最大となり、ぬれに界面電気現象が関与していることが明らかになった。さらにぬれの基礎的研究として、ウィルヘルミー法による動的接触角の測定法の検討を行った。ウィルヘルミー法で求めたYoungの接触角を用いて固体の表面自由エネルギーを見積り、さらに表面自由エネルギーの分散力成分と極性成分を算出した。熱力学的に意味のある接触角は三相境界線の上昇あるいは下降速度が0.5mm/minの条件で得られることがわかった。
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