研究概要 |
生化学の研究ではゲル電気泳動法が広く活用されている. この方式を, かつては電気泳動の主流であったチセリウスの移動境界法電気泳動と比較すると次のような利点と欠点があげられる. :(1)利点:簡便・高分解能・試料の必要量が僅か;(2)欠点:低い定量性・即時測定の不可能・検出に際しての試料の損壊. これ程までに, 電気泳動が普及しているのに関わらず, その基礎的研究を行う研究者が僅かであり, 最近は新規な手法の開発のペースも鈍ってきている. 我々は, 電気泳動の基礎的研究を盛んにする為のひとつの手だてとして, 自由溶液中での蛋白質の電気泳動を正確・簡便・迅速に測定できる, 言わばチセリウスの電気泳動装置の現代版の製作を企画し, 本研究費補助金の援助を得て試作研究を進めてきた. 幸い, 試作は成功裡に終了し満足できる動的光散乱電気泳動装置が完成した. 試作装置の構成・性能などの詳細は成果報告書に記載した通りである. バイオテクノロジーの進展に伴って, 蛋白質から細胞に到るまで, 特性を評価すべき新規な対象は日毎にその数を増してきている. 電気泳動挙動はそれら特性の中にあって特に重要なものである. 試作装置を母体として優れた市販装置が誕生しようとしている. 蛋白質から細胞まで, 汎用的に自由な溶液中で電気泳動移動度を決定できる装置を本試験研究によって世に送り出すことが出来たのは, 代表者として喜びに耐えない. 今後は試作機を我々の研究のあらゆる局面で活用して, その有用性を確認・顕現してゆきたい.
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